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夏祭り・七夕にて30年ぶりの・・・

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七夕に行ったのに、あまりの混雑で、写真を撮ることもできなかった・・・

これではなんの祭りかわからん。

さて、その日私は家族がビーズ細工の小物を見ているのを後ろから

そのカッパはいい、とか、このライオンの細工は素晴らしいだの言っていた。

そこに、うちわで人の肩を叩く人物がいる。





「よぉ・・・」




振り向いて私は飛び上がらんばかりに驚いた。





金色の目に、でかい金属をはめ込んだようなピアスのお世辞にもガラのいいとは言えない

風体の男性である。





30年ぶりの同級生再会の図だ。





彼は中学の2・3年の時に同じクラスだったM君だ。

高校に行ったかも実は定かでは無い。怪しげなウワサもないことは無かったが、もっと人はずれた

ようなウワサがある人物もいたので、気になっていないわけではなかったけれど、いつしか消息は

それ以上ささやかれることも無くなった。



中学生の頃から、彼は少し、いや、だいぶ攻撃的な一面を持つとがった少年であった。

おばぁちゃんとお母さんと暮らしていたはずだけど、離れのような家というか部屋を持っていて

一度みんなでそこに出かけ、同級生5~6人で何かの課題を仕上げた気がする。



いわゆる不良と言われてしまうような、こと、教師には物凄い威嚇をしていた。

しかし、皆が訪ねていったこともあるように、小学校を共にした女の子は、

「M君は昔作文もとても上手だった漢字もできた・・・悪い子じゃないんだよ・・・本当は」

と言っていた。



彼に中3のときか、家まで自転車で2人乗りをして送ってもらったことがある。

私を降ろして、チャリチャリと帰っていったっけ。



中3になると、やはりピリピリしたムードが漂う子供が増える。

己の身の上に降りかかる圧力に耐えられず、人をいたぶって、蔑すみ、

自分の優位を作り、息を吸う、そういう「輩」が現れる。



A君という出来の良いおぼっちゃんがいた。

全くもって、言いがかりとしか思えないことに、けちをつけられ、

その「輩」に、クラスの誰もが眉をひそめる行為をくりかえされるのであった。

一回、教師が、クラスの力を持った男子を集め、どうにかならんかと、仲介に

入ってみんか?と話をした。


応えは沈黙だった。

「輩」は決して、その力を持った男子の対象になるような器ではなかったけど

彼らは何も言わなかった。


意気地なしめ。

のらりくらりと話を聞いて沈黙する男子に心の中で、そう思いつつも、原因は

「輩」に圧力をかけている存在をどうにかすることじゃないのか

と私は静かに教師にも怒っていた。

「輩」たちの家庭をみてくれ。話してくれ。

A君を救ってくれ。




ある日、朝礼で、こぜりあいが始まった。

A君に蹴りが入る。いつも、止めるのはだいたい女子だ。

耐えられず、

「止めな!いい加減にしなよ!」

と割って入る私に、M君は初めて、刺すような目で

偽善者!

と吐いて捨てた。




私はこの「偽善者」と言われたことが、いたく心に残っている。

そして、その日から、私は「偽善者」だという彼が心に住み続けている。

そのときは、憤懣やるかたなく怒ってはいたものの、そうかも知れぬという思いが

やがて確信に変わったのだ。自分は「偽善者」なのだな。




中3の3学期はあっという間に過ぎる。

同じ高校を目指す仲間と情報を交換したり、テストの問題を競い合ったり、

知らず知らず、限られた視界の中で生活し、そして、卒業だ。



M君とはそれっきりだった。

3学期・・・話した記憶も無い。











それが、実は去年の夏、彼が夏祭りの露店商として座っていたのを見たのだ。

一目で彼だとわかった。

私は話かけなかった。家族をつれて、遠巻きに元気そうな彼を見て、足も止めず。








今回、彼のほうから、声がかかった。

家族に紹介する。

「ほら、おじちゃんの目は金色だねぇ・・」

「ハーフなんだよ」

「どんなハーフだかねぇ」

「関西と関東のハーフなんだよ」

家族は完全に顔が引きつっている。そりゃそうだ。




「なにしてるんだよ」

お互い同じことを言う。

「サラリーマンだよ。配送の仕事してるんだ。」

目を丸くする私に

「本当だぜ」

と言う。



去年、露店で見かけたことを告げると、何で声をかけなかったのか

怒られた。

実家の父をたまにみかけて、私のことを気にしていたそうである。

おかげさまで、育ち盛り、こんなに育っちまってますよ・・・と

腰に手をあて、胸をはる私の腹に、ウチワでもう一人いるわけ?

と遠慮なくパンパン確認をいれる。



ひきつる家族が、私をひっぱり、帰ろう帰ろうと催促する。



それじゃ、またね、と別れる。














「何してる?」

「何って?」

言葉に困って私は、仕事のことを聞いたけど、本当は、君が何の仕事をしていようが

そんなことは、どうでも、本当にどうでもよかったんだよ。

「幸せにしているのか?」

それが聞きたかったのだ。

私は、そこそこ幸せだ。

「君もそこそこ幸せかい?」

もっと幸せなら、なお、いい。

でも、等身大の毎日が、そこそこならば、それでいい。










帰り道、私は物凄く機嫌が良かった。

笑いが止まらなくなっていた。

気にされていたのは私の方だったか。









後にも先にも、一度きりの自転車の2人乗り。

M君は元気であった。

気にかけてくれる、その存在がどんなに遠くにあろうとも

人を幸せにするのだ。



M君、ありがとう。
by yocchi0220 | 2009-07-14 09:45 | 出かける
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